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Showing posts from January, 2021

5番街ニュースその1「レダラッハ」

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  コロナによるロックダウン以降、景気が悪くパッとしない NY ですが、そんな中でも新規店舗をオープンした企業が幾つかあります。 YT 社のすぐ近く、ミッドタウン5番街にスイスのチョコレート専門店「レダラッハ」が昨年暮れにオープンしたフラッグシップ店もその一つ。「レダラッハ」 100 店目に当たる同店の面積は 2,500 SQF 、店に入ってまず目に入るのが、ちょいと不思議なカカオの彫刻。 その左手には好きなフレーバーを好きなだけ買う量り売り方式のフレッシュチョコレートのカウンターがあり、小さなかけらを試食させてくれます。「レダラッハ」の代名詞とも言えるフレッシュチョコレートは地元スイス産の牛乳、クリーム、バターをふんだんに使い、スイスの工房から出来立てを空輸しているもので、賞味期限は種類によって2週間から4週間とされています。 0.25 パウンド(約 113gm ) 9.9 ドルと、やや高価ですがチョコレート好きな人へのギフトや、自分へのご褒美におすすめ。 壁一面にはラッピング済みのフレッシュチョコレートや今ならバレンタイン用の限定品がダーッと並んで圧巻。奥にはトリュフのカウンターもあり、一個から買えるのが嬉しい。チョコレートラバーの皆さん、是非一度 5 番街のチョコレート天国へ、いざゆかん。 Läderach 537 5 th Avenue, New York, NY 10017 11:00-19:00 https://us.laderach.com/

「脱炭素社会」とこれからの建築

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  1 月 20 日、この日付はアメリカ憲法上謳われている 4 年に一度大きな意味を持つ日です。 4 年或いは 8 年に一度、新旧大統領はこの日の正午に入れ替わりますが、今年はバイデン新大統領が物々しい警戒体制の中、誕生しました。異例の就任式を終えたバイデン氏はホワイトハウスの執務室に入り、早速初仕事として 15 本の大統領令を出しました。折からのコロナ感染拡大を食い止める重要な施策にもいくつか署名をしましたが、アメリカだけでなく世界にも長期的な影響をもつであろうものの一つに、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰することを国連に通達する文書にも署名をしました。この他にもカナダからメキシコ湾に原油を運ぶパイプラインの拡張計画を巡り、前政権の出した許可を取り消すなど、「脱炭素社会」に向け一気に舵を切りました。 「脱炭素」というと従来のガソリン車から電気自動車に転換を図るなどの最近の自動車業界の動き、広くは輸送業界の傾向を思い浮かべる方が多いかと思います。今日は、それ以上にこれからの「脱炭素社会」に大きな影響をもつであろう建物や建設業のお話を致しましょう。 国際エネルギー機関( IEA )の 2019 年の統計によると、世界の炭素排出の原因は、その 23 %が輸送関連であるのに対し、一般住居とそれ以外の建物全体で 28 %、建築関連産業で 11 %、建築以外の産業全体で 31 %、その他が 7 %という内訳になっています。また、建設資材自体とその採取、製造工程を含めると炭素排出全体の 50 %程度にもなるという別の統計もあります。 「パリ協定」では、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどを目標に掲げていますが、これを受けて世界の 122 の国と地域が 2050 年までの実質ゼロを目指しています。菅首相も所信表明演説で、この目標に言及し、「脱炭素社会」の実現に向けて意欲を示されています。 最近の建設業界では、エネルギー効率とサステナビリティを柱とする LEED ( Leadership in Energy and Environmental Design )などの基準に沿って、資材の選択や建築プロセスで炭素排出量を減らす努力をする傾向が顕著になってきています。具体的な環境への影響を数値化するため、 Life Cycle Impact Assessme

コロナが変えた働き方とオフィスのあり姿

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新年明けましておめでとうございます。 2020 年は、コロナに明け、コロナに暮れた大変な年となってしまいましたが、 2021 年はワクチン接種の広がりによって希望の光が見える年になることを願ってやみません。 そんな 2021 年は穏やかな年明けになるかと思いきや、首都ワシントンはいきなり衝撃的で歴史的な年始となりました。一方で新型コロナの猛威は全土で収まらず、また変異した感染力の強い新種のウイルスも感染例が出始め、アメリカ全土では累計感染者数は 2,100 万を超え、死者数は 36 万人以上になってしまいました。日本でも年末年始にかけて感染者が急増し、 1 月 7 日には、東京、神奈川、埼玉、千葉の 1 都 3 県に 2 度目の緊急事態宣言が発令されました。 2021 年も新型コロナが経済や社会に暫く大きな影響を及ぼしそうです。 年末 12 月 29 日付の Wall Street Journal は、一般の人々が広くオフィスに戻ってこられるのは、今春遅くか夏の初めになるだろうと報じています。その中で、ワクチン接種の普及によってアメリカ人の少なくとも 65 %にコロナの免疫が出来る頃にならないと一般の人々の職場への回帰は始まらないであろうと予想しています。春の終わりから初夏にかけて、人口の 45 %程度の人々がワクチン接種を終え、その頃には既に感染した人々が 25 %程度いるだろうという計算で、両者を合わせて感染とワクチン接種の重なった人の数を引くと 65 %程度の免疫率というものです。また、この記事の中で、優秀な働き手を採用・確保しようとするアメリカの優良企業の中には、従業員に働き方と働く場所の選択肢を与える ”hub-and-spoke” 戦略を取る企業が出てきていると紹介しています。これらの企業は、本社以外に都市部に複数のサテライトオフィスを設け、(1)従来の本社への出社、( 2 )家に近い新設のサテライトオフィスへの出社、(3)家からのテレワークのどれか、あるいは組み合わせを社員に選択させる自由を与えるとのことです。 更に新年 1 月 4 日付の New York Times は、ある調査によると、 40 %近い働き手は、従来の職場は仕事の生産性を高めていないと感じており、自分の生活の場と仕事の場を選んでも能力とスキルがあれば収入に影響はない

新年雑感

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皆様、新年あけましておめでとうございます。 昨年来、新型コロナウィルスの感染という災禍により、公私を問わず私達の日常は一変いたしました。現在の欧州や米国などの「西側諸国」は、今回のコロナ禍によって第二次大戦後でも類例のない苦境に陥っています。一方、中国政府の対外姿勢は、早期に「封じ込め」を成したという自負を持って、自らの優位を誇示するものになっています。ウイルス禍対応に苦慮する欧米諸国に反省を求めるといった趣旨の中国政府の論調は、「自由」や「民主主義」体制への信頼を揺るがせ、それとは相容れない「権威主義体制の優位」を主張しようとしています。 現代の私達にとって「民主主義」とは、今更問う迄もない自明の言葉です。そして戦後の日本は、近代民主主義の先進国とされる米国に学ぼうとしてきました。その米国の民主主義が、今回の大統領選挙の正当性をめぐって大きく揺らいでいます。 「民主主義は良い政府を実現するための方法ではない。寧ろ説明責任を引き出したり、悪い政府を罰したりするための方法だ。良くない政府は罰せられるべきなのだ。」これは英国人ジャーナリストのビルエモット氏の言葉です。 民主主義は良い政治、良い政府を齎す筈だという理解からすると、この言い方には違和感を覚えます。しかし、これこそが民主主義の本質なのです。 しかも、肝心なことは、ここに言う「悪い政府」「良くない政府」とはどういう政府なのか、何をもって「悪い政府」と判断し得るのか、その客観的基準が全く想定されていないということです。要するに、「悪い政府」とは、ただもっぱら人々が「悪い」「良くない」と感ずる政府ということであり、人々のその感じ方は全く気まぐれなものなので、それに従って「良い政府を実現する」ことが出来るなどと期待してはならないということなのです。 時の政府がいくら最良の方策をとり、最善を尽くしてそれを説明しても、人々がそれを理解せず、納得しなければ「説明責任」が果たされたとは言えず、そのような政府は罰せられなければならない…それが民主主義というものなのです。そう考えれば、今回の大統領選挙の混乱も、民主主義が内包する宿痾とも言えるのでしょう。 一日も早く平穏な社会生活が戻ることを祈りながらも、私達がこれまで当然と思ってきた価値観や制度が、決して自明のものではないことを考えさせられる年初の日々です。