(続)アメリカ大統領選大予想 Surprise, surprise!!

 

PHOTO: JABIN BOTSFORDTHE/WASHINGTON POST

大統領選の直前、10月に入ったとたん、Breaking Newsが全米を震撼させた!
「トランプ大統領夫妻、コロナ感染を発表!!」

まさにOctober Surpriseのこのニュースは、来る大統領選を更に不透明な闇の中に突き落とすようなものでした。「まさか?、大統領まで感染するとは。」「やっぱり、ついに!!」アメリカ国民の受け取り方を二分していたのは、それまでのコロナ対策に対しての政治的分断を映し出したものとも言えます。 

そのトランプ大統領は、102日金曜日にワシントン近郊のウォルター・リード軍医療センターに急遽入院、当分病院での隔離生活を送るのかと思いきや、3日後の月曜日にはまさかの退院、ホワイトハウスに戻るという目まぐるしい展開でした。これまで徹底的にマスク着用を拒否し、コロナの怖さを否定し続けてきたトランプ大統領もさすがに今回ばかりは、自分がそのコロナに感染してしまい、「自分が間違っていた、国民の皆さんもコロナを軽視せず、マスク着用や感染防止に努めてほしい。」とでも言うのかと期待した国民も少なくなかったかと思います。 

が、大統領専用ヘリを降り、ホワイトハウスに到着するや、マスクを外し、メディアのカメラに向かって敬礼する雄姿をアピールするだけでなく、ツイッターで「コロナは恐れるな!コロナに生活を支配させてはならない!!」と書き込み、自分はコロナに打ち勝った「強い大統領」をアピールしました。一部のメディアでは、「顎が外れるほど唖然とする発言と振る舞い」として批判をしましたが、大統領本人は、「すぐに選挙遊説に戻る。」と強調しました。 

さて、その混迷の選挙戦ですが、混乱の極みだった929日の討論会の後、コロナに掛かったトランプ大統領の世論調査の支持は、大きくバイデン候補に水をあけられています。ただ、この全米での世論調査は必ずしも選挙結果を反映するものではなく、前回2016年の大統領選のように接戦州の選挙人の数が最後の勝敗を決めるものとなります。 

アメリカの大統領選挙では、まず州の人口ごとに「選挙人」が割り当てられています。その人数は、上院議員数100人と下院議員数435人にワシントンDCに与えられる3人を加えた538人が総数となっており、当選に必要な獲得選挙人数は過半数の270人です。最大の選挙人が割り当てられたカリフォルニア州で55人、人口の少ない数州で3人と州によって大きく違いますが、メーン州とネブラスカ州を除く48州で、一般投票で勝利した候補者が全部獲得する、いわゆる勝者総取り方式で選挙人の数が決まります。

ところで、今年の大統領選本選は113日に投票が行われますが、前回のニュースレターで書きましたように、郵便投票の開票、集計が長引き、3日の夜や翌朝までに最終結果が出ない可能性が充分あります。また、特に接戦になると、その集計結果に両陣営から疑義が唱えられ、訴訟に持ち込まれることも考えられます。世界の成熟した民主主義国は、独立した選挙管理委員会に選挙結果を委ねていますが、アメリカは共和党と民主党の党員に選挙管理の権限が与えられているため、投票の無効や不正の疑義が訴訟に持ち込まれると、最終的には裁判所の判事が判断し、その判事も両党のいずれかに所属する知事や大統領に指名されています。 

ご記憶の方も多いかと思いますが、2000年の大統領選は史上稀に見る大接戦となり、更に開票後の集計作業の混乱が重なり、結局投票日から35日後に裁判所の判断により決着しました。最後はフロリダ州の行方が選挙結果を左右することになり、最終的にフロリダ州としての選挙人を決めなければならない1212日に連邦最高裁が再集計を求めましたが、再集計が不可能だったことから、翌13日にゴア陣営が敗北を認め、過半数ぎりぎりの271人の選挙人を獲得したブッシュ候補が僅差での勝利を収めました。 

正式な手続きとして、その選挙人団が憲法の規定により「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」に州ごとに選挙人集会を開いて投票し、その選挙結果を期した証書に選挙人全員が署名して認証し、州知事が選挙人認定証書に署名することにより州としての最終決定となります。今年は1214日の月曜日に当たりますが、この日までに決まらないと更に法廷闘争が続くか、あるいは270人の選挙人を獲得した候補が確定せず、憲法(修正第12条)の規定によって議会が大統領を決めるという事態も考えられます。かつて米国史上では1824年に一回、議会が最終的に大統領を選んだことがあります。今年の大統領選は幾つかの州で最終結果がもつれにもつれて、なかなか決まらない事態が予想されます。

さて、まだ10月のサプライズが起こるかも知れませんが、連邦最高裁や議会が登場すると更に複雑になりそうです。次週又この続きを予想しましょう。(次号に続く)

 YT DESIGN HOMEPAGE 

Comments

Popular posts from this blog

アンティーク家具の宝庫、ハドソンバレーへの小旅行

コロナが変えた働き方とオフィスのあり姿

コロナ禍での日米往復体験記